未病を治す
中医学には、病気にかかった人を治療することよりも、まだ病気ではないが半分病気の状態(これを「未病」と言う)の人を治すことがより大切であると伝統的に説かれています。 二千年以上前の中国最古の医学書「黄帝内経素問」に「聖人不治已病治未病」とあります。これはつまり、病気になってしまった人を治すより、まだ病気になっていないが、しかし病気になるかも知れない人を治すのが名医であると言うわけです。
未病にまつわる話
「黄帝内経素問」の冒頭で、黄帝が仙人に質問します。 「上古の人はみな百歳までも生きて元気だった、それにひきかえ現在の人は五十歳になるかならないかで衰えてしまう」 これはどうしてか?
仙人が答えます。 「上古の人は養生の道理をわきまえ、陰陽にのっとり、養生法に則って身体を鍛錬し、飲食には節度があり、労働と休息にも規律があり妄りに動きませんでした。それなのでとても健康になり百歳を過ぎて世を去ったのです。それに反し現在の人は不養生をして、「飲食に節あり、起居に常あり、妄りに労をなさず」ということができず、色欲のおもむくままに精気を使い尽くし、養生の道に反して享楽しています。こんなことだから50歳になるやならずで老衰してしまうのです」。 これは養生の道の重要性を説明している部分ですが、二千年以上も前に書かれたものとは信じられないぐらいの内容で、まるで現代の話のようです。太古の昔、人はみな百歳までも元気に生きたと言うのに、火や道具を使い文化が発達し便利になるに従い、健康を失い病を増やしてきたような感じがします。
病気を予防するあるいは一病息災で多少ぐあいの良くないところがあるにしても、さらに病気を進行させないためには、新鮮な野菜と果物を中心にした食事を食べ、ほどほどにちょうど良く仕事と運動をおこない、ストレスを小さく感じるように心がけることが今の私たちの生活のベースとして必要なのだと思います。その上で漢方を使えばさらにベストな状態が期待できるでしょう。 体調が悪くて病院に行き、検査の結果異常はありません、と先生に診断されてもやはり同じように調子が悪く元気が出ないのは「未病」の状態と思われます。漢方の得意とする分野です。
「未病」は現代医学の検査で病気とは診断されないが、健康でもない、“プチ不調”のこと。これを放置することが、多くの病気を引き起こしています。特に最近注目されているのが、 “がん、心臓病、脳血管障害、高血圧、動脈硬化、糖尿病” などの生活習慣病です。これらの病気は、長期にわたる治療や高額な医療費がかかる場合もあります。なにより恐ろしいのは、これらの病気によって日本人の3分の2近くが、亡くなっているということ。生活習慣病の原因には,個人差がありますが、普段の生活習慣が病気と密接に関係していることが分かっています。 厚生労働省でも「病気になってから治療するのではなく、一次予防の観点から体調を維持するように」というようなことを国民に呼びかけています。
その活動のひとつとして「健康日本21」という健康づくり運動が平成12年からはじまっています。生活習慣病を引き起こす代表選手とされている、「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)などの該当者・予備群に対する保健指導を徹底するため、平成20年4月から健診・保健指導の仕組みも変わります。
ちなみに、すっかりおなじみになった「メタボリックシンドローム」は、日本語で「代謝異常症候群」「内臓脂肪型肥満」と呼ばれています。おなか周りが男性85cm、女性であれば90cm以上の内臓脂肪の蓄積(ウエスト周囲径の増大)、これに加えて脂質代謝異常、高血圧、高血糖の3項目のうち2項目以上を満たす場合に、メタボリックシンドロームと診断されます。 病気が発症してからでは遅すぎますよね。 |