鉄欠乏性貧血とは、その名のとおり血液中の鉄分が不足して起こる貧血のことです。貧血の80〜90%を占めるのが、鉄欠乏性貧血です。
血液の成分のうち、赤血球にあるヘモグロビンは酸素をからだの隅々まで運ぶ働きをしています。このヘモグロビンができるときに、鉄分を必要とします。なんらかの原因で体内の鉄分が不足すると、ヘモグロビンの合成がうまくいかなくなります。すると赤血球中のヘモグロビンが減り、また、赤血球そのものも小さくなってしまいます(鉄分の不足からヘモグロビンが減り、赤血球が小さくなる症状を、「小球性低色素性の鉄欠乏性貧血」といいます)。
その結果、体内への酸素供給量が減り、だるい、疲れやすいといった症状が起こるようになるのです。また、階段を上ったり、駆け足をしたりすると、酸素を補うために心拍数が増加し、動悸(どうき)や息切れなどの症状も起こりやすくなります。人によっては頭が重く感じたり(頭重感)、胸の痛みをおぼえたりすることもあります。
こうした症状は一気に出るのでなく、少しずつ進みます。それは鉄分の不足による貧血が、非常にゆっくりと進行するからです。
一般に貧血は、若い女性によくみられる症状です。そのため中高年の、特に男性の場合には、「自分は貧血とは無縁」と思い込んでいる人が多いのではないでしょうか。
例えば、なんとなくだるい、疲れやすいといった症状があると、「年のせい」と考えがちです。ところが、実は貧血の影響、という可能性があります。中高年の場合には、若い女性とは違った原因で貧血を起こすことがあり、その背景には重大な病気がかくれていることもあるので注意が必要です。 |