1.高血圧による心疾患の発症
高血圧と心疾患の関連も,脳卒中との関連性よりも弱いが,脳卒中と同様の関連を示す。心疾患を冠動脈疾患に限定しても同様である。男性では,収縮期血圧が10mmHg上昇すると,冠動脈疾患罹患?死亡のリスクは約15%増加する10。
慢性腎臓病の患者は,血圧が高いほど予後が悪く,脳卒中,心筋梗塞,総死亡リスクが高い。また,血圧管理は腎障害を軽減し,その後の心血管リスクの低下を促す。本邦においても,久山町研究,NIPPON DATA90などのコホート研究において,推算糸球体濾過量の低い人ほど,循環器疾患発症?死亡リスクが高いことが示されている。また,NIPPON DATA80では,蛋白尿陽性者は循環器疾患死亡リスクが高いことが認められている。
3.リスクの重積,メタボリックシンドロームと循環器疾患
メタボリックシンドロームを呈する人の循環器疾患発症リスクが高いことは,欧米の疫学調査でよく知られているが,本邦の疫学調査においても,メタボリックシンドロームを呈する対象者は,そうでない人に比して,循環器疾患の罹患リスクや死亡リスクが,1.5-2.4倍程度であった。また,メタボリックシンドロームの危険因子の多い人ほど,そのリスクは高くなった。一方,肥満の有無にかかわらずリスクの集積が重要であるとする結果がNIPPON DATAや愛媛の疫学調査から,耐糖能異常の有無が重要であるとする結果がNIPPON DATA2から報告されている。
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