アトピー性皮膚炎など皮膚病には漢方治療がいい
皮膚病は病名と症状が必ずしも一致しない病気です。例えばアトピー性皮膚炎でも、皮膚が真赤(紅斑)で熱感(発熱)があり、痒みが強いこともあれば、皮膚に小さなブツブツ(漿液性丘疹)ができ、痒くて掻くとジクジク(湿潤)してカサブタ(痂皮)になる。また、皮膚が厚く(肥厚)固く乾燥し(苔癬化)痒いなど、人によって様々な症状が見られます。そのため、皮膚病の治療は皮膚にできる発疹の状態の正しい認識が大切です。
漢方は皮膚病に効くの?
皮膚病の漢方治療は、皮膚病の病名だけでなく、発疹の性質と病変、部位と全身状態を四診(望診、聞診、問診、切診の4種類の病状診断法)八綱(陰陽、表裏、寒熱、虚実を分析し病気の属性、位置、性質、病状の軽重を判断する)を用いて、その皮膚病の病因病理を総合的に分析して証を決め、治療法を確定します。
アトピー性皮膚炎は漢方では湿疹の名で呼ばれています。湿疹はある種の過敏体質(アレルギー体質)の人が特定の内外因によって引き起こされた皮膚の急性、慢性炎症の一種で、皮膚に多様性の発疹が対称的に存在し、激しい痒みを伴うことが特徴です。古くは、浸淫瘡、四弯風、頑癬などと呼ばれていました。
アトピー性皮膚炎(湿疹)は、発疹の皮膚組織内の病態によって、急性型、亜急性型、慢性型の三種に分類します。
急性型は表皮内小水疱が主体で、真皮では血管拡張と浮腫、リンパ球や好中球、好酸球が血管周囲に浸潤するため、皮膚に紅斑、水疱、ぴらん、湿潤など急性炎症の症状が強く現れ、病変の境界が不明瞭で痒みが激しいのが特徴です。全身的には便秘ぎみで尿の色が濃く、舌質が紅く舌苔が黄色で膩の傾向があります。風湿蘊積(風邪湿邪が蓄積する)証と考え、治療法は清熱利湿・袪風(寒性苦味の火邪熱邪を除去する)を選びます。
亜急性型は表皮内に細胞間浮腫や細胞内浮腫、小水疱があり、同時に中程度の表皮肥厚や不全角化が見られ、真皮ではリンパ球や好中球、好酸球さらに組織球が浸潤するため、皮膚に丘疹、結痂、浸潤性の紅斑などの症状が現れますが、急性湿疹より炎症は軽度です。全身的には胃腸が虚弱なため軟便ぎみで尿色も薄く、舌質は淡く舌苔が薄膩の傾向があります。脾虚湿阻(脾気が虚弱し湿熱が蓄積する)証と考え、治療法は健脾化湿・袪風(脾気を補益して湿邪を除去する)を選びます。
慢性型は表皮肥厚と表皮突起延長を主体に角質増殖と不全角化がこれに加わり、軽度の細胞間浮腫はあるが小水疱はなく、真皮にはリンパ球や好酸球、組織球、繊維芽細胞が浸潤するが好中球はいないため、皮膚に肥厚、浸潤、苔癬化し色素沈着するなどの症状が現れて、痒みが強くなります。全身的には疲れやすく、めまいが起こりやすくて、舌質は淡く舌苔は薄い傾向があります。血虚風燥(血液が皮膚を滋養しない)証と考え、治療法は養血袪風・潤燥(血虚を治して津液を養い風邪燥邪を除去する)を選びます。 漢方治療は、発疹の皮膚組織内の病態と皮膚病ができている人の個性を考え合わせて決めるため、長年の経験と技術が必要です。ご自分で判断されずに、必ず漢方の専門家にご相談されることをおすすめします。
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