摂食障害は先進国に多くみられ、日本でも若い女性に急増して大きな問題となっています。主に思春期から20代の女性にみられますが、最近は男性にも増えています。
摂食障害には主に拒食症(神経性食欲不振症)と過食症(神経性大食症)とがあります。拒食症は、異常にやせてもまだ太っていると感じて体重が増えることを強く恐れ、やせを維持しようとします。一方
過食症は、食べたい衝動が抑えられず、短時間に大量の食べ物を食べますが、あとでそのことを後悔して憂うつになったり、太ることを恐れて吐いたり下剤を使ったりします。
拒食症、過食症とも症状は患者さんによってさまざまで、拒食症から過食症に移行したり、両方を周期的にくり返したりすることも少なくありません。いずれも心理的な問題が原因で食事のコントロールが困難となり、体や心にさまざまな問題を引き起こす、軽視してはいけない病気です。摂食障害の治療と改善には、この病気を理解することが大切です。ここでは、拒食から始まって過食と嘔吐(おうと)をくり返すタイプを中心にみていきます。
摂食障害の発症にはストレスを適切に対処する能力が大きくかかわっています。ストレスによって血圧が上る、不眠や気分が落ち込むなど、体にも心にも異常をきたすことはよく知られています。進路や人間関係など思春期・青年期特有の挫折体験を乗り越えられないとき、やせることに没頭するとつらさから逃れられるような錯覚に陥ります。実際に、やせると、つらいと感じる感受性が鈍くなり、嫌なことにも耐えられるようになります。過食はアルコールにも似て、食べている最中は嫌なことを考えないで済むという一時的な逃避の効果が得られます。
負けず嫌いで完璧を求めやすい人は挫折をストレスと感じやすく、発病のきっかけになりやすいでしょう。八方美人でNoを言えない人もストレスをためやすいでしょう。やせると自信を持てるような社会的風潮があり、挫折を感じた女性がダイエットに走りやすいことも、近年の摂食障害患者の増加を後押ししていると考えられます。